
出雲そばの名店が街のあちこちの点在知るそば処、松江。この地で育ったそばが、伝統の食文化に新風を吹き込んでいます。
「玄丹そば」。耳慣れない名前に、これはどこの蕎麦だろうかと首を傾げる人も多いのではないでしょうか。種を明かせば、島根県は松江産のそばのことです。
ところで、松江と言えばお茶処であるとともに「そば処」でもあります。松江市内には、創業100年を越える老舗がいくつかあり、お昼時にはサラリーマンも食べに訪れるなど、郷土食として今なお生活に溶け込んでいます。
「顛が付いたままそばの実を製粉するため色が濃く、のどごしを楽しむ江戸そばとは食感が違います」とは老舗そば屋の3代目で松江そば組合事務局の西村保則さん。コシが強く少し太めの出雲そばは、すするというよりは、噛んでその素朴な風味を楽しんで食ベる方が合っています。

▲昭和5年創業の店「きがる」。
食べ方においても独自の文化を生んだ出雲そば。よく知られるのは、丸い3段重ねの詰にゆでたそばを盛った「割子そば」です。そばと一緒に出されるネギ、おろし大根、カツオ節などの薬味をのせ、そばつゆをかけて上段から順にいただきます。そばつゆは、店によってそれぞれ製法が違いますが、風味の強いそばに負けないよう味は濃いめ。少しずつかけるのがおいしく食べるコツです。

▲石臼でゆっくり自家製粉だから、いつも挽きたて。
また、西村さんが「寒い季節には特におすすめです」と話すのは「釜揚げそば」。これも出雲地方独特の食べ方で、ゆでたそばを水で洗わずに器に入れ、そば湯を張って出す温かいそば。とろりとしたそば濠には、血圧を下げる作用があると言われるルチンなどの栄養も溶け出していて、体にもいい一品です。

▲出雲そばと言えば割子そば。釜揚げそばに割子そば1、2枚が通の食べ方。
さて、こんな松江の出雲そばに近年よく用いられているのが「玄丹そば」です。その名称は、松江市郊外の減反(げんたん)政策による休耕田を活用して栽培されていることと、明治維新時の松江藩の危機を救った玄丹お加代をかけて付けられました。平成9年度から、松江市や地元の商工会議所、JA、松江そば組合などが協力して普及を進めてきた玄丹そばは、現在、多くの生産農家に支えられ安定した品質を提供できる地元ブランド品に成長しつつあります。
「玄丹そば」は、毎年11月頃から松江そば組合の加盟店で食べることができます(取り扱い量や時期は店舗により異なります)。地元の伝統の味を、地元で穫れた原料で作る出雲そばは、まさに松江のスローフードと呼ぶにふさわしい逸品です。

▲体の中から温める釜揚げそば。あらかじめ少しだしが入れてある店もある。
◎松江そば組合加盟店
- 出雲山地蕎麦工房 ふなつ
- 十一軒
- 上田そば
- 井津茂 そば林
- 出雲そば きがる
- 一色庵
- 神代そば
- そば田村屋
- 後藤そば店
- そば清
- 橘屋
- 旬菜
取材協力 松江そば組合事務局(出雲そばきがる) 島根県松江市石橋町400-1 TEL.0852-21-3642
※山陰の"味"シリーズは、一畑高速バス車内誌「Suki」に掲載された情報を元に再編集したものです。記事は2009年4月発行時の内容ですのでご了承ください 。








